Research Topics
鋼構造の力学性能を解明し,
新たな耐震設計法を構築する基礎的な研究
鋼柱の設計法
 地震による倒壊防止に最も重要な部材は柱です。 高い軸力を受ける鋼柱は変形が大きいと付加曲げを受けて複雑に挙動します。 これらの現象を踏まえて設計する力学理論を整理し,実験や解析により性能の限界を明らかにして, 高精度で合理的な柱の設計法を構築します。
角形鋼管柱の局部座屈性状 H形断面柱のスチフナ補剛効果
鋼梁の保有性能評価
 鋼構造の耐震性能は梁の塑性変形能力に依存していますが, 鋼材の性質や柱との接合方法によって座屈による劣化や破断などの破壊が発生する限界が決まります。 このような現象を踏まえ,様々に変動するランダムな地震応答における梁の変形能力を 定量的に評価する手法を提案して実験的に検証し, 高精度に破壊までの性能を予測する耐震設計法を構築します。
繰返し塑性履歴を受ける
梁端接合部の変形能力評価
 南海トラフ地震などの海溝型地震による長周期地震動を受けると, 高層建物では,鋼構造ラーメンの場合,梁端接合部に多数の繰返し塑性変形を受けることが予測されており, 接合部の破断の可能性が懸念されています。様々な接合詳細を有する梁端接合部の繰返し載荷実験を通じて 溶接部に生じる亀裂の進展を定量化し, ランダムな地震応答における接合部の破断までの変形能力を評価する手法を構築します。
梁端接合部のランダム振幅載荷実験 梁フランジ溶接部の亀裂進展
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亀裂進展曲線
接合部の性能評価
 溶接や高力ボルトで接合して作られる鋼骨組の耐震性能は,接合部の局所変形や破断を避けなければ達成されません。 終局時に接合部に要求される性能を明らかにし,理論や実験により破壊時の耐力を高精度に評価する方法を構築して, 接合部の破壊を防ぐ設計法を確立します。

接合部の要求性能を明らかにする研究
 接合される部材の構造的な役割に応じて,接合部が果たすべき性能が決まります。 構造物の耐震設計における終局限界状態では,構造骨組のメカニズムにおいて 塑性化する部材の接合部を破断させないことにより, 骨組の水平耐力を保持する機能を維持しなければなりません。そのために,終局時に想定される最大応力を明らかにし, さらには材料強度や接合部耐力の変動を考慮して,設計時に確保すべき接合部の耐力に関する要求性能を明らかにします。
PCaカーテンウォールの変位追従性能
 鋼構造の高層ビルの外壁にはプレキャストコンクリート製のカーテンウォールが用いられ, 地震時に構造骨組が大きく変形しても 外壁パネルの損傷や脱落を防止できるように特殊な機構を備えたファスナーで建物に取り付けられています。 上町断層帯地震などの倒壊の危険性も考慮しなければならないほどの大きな応答が予測されている地震動を受けた場合には, 建物の倒壊より先に外壁パネルが落下することを防止することが必要であり,実大のパネルを使った実験により, パネルの損傷と落下の発生過程を解明し,予測技術を構築します。
新しい構造方法や既存建物の保全を実現する
技術と設計法を開発する研究
新しい柱梁接合部の開発・研究
 隅肉溶接と高力ボルト接合を併用して格段に施工性を高めた外ダイアフラム形式の柱梁接合部を対象に、 理論や実験に基づいて力学挙動を解き明かし,実用的な剛性,耐力の評価法、設計法を構築します。
高強度鋼の利用技術の開発
 従来鋼より2倍以上強度の大きい高強度の構造用鋼材が実用化されています。 弾性限界が格段に大きい性質を利用して大地震でも無損傷の構造物を実現するための設計法を提案します。 また,この鋼材は溶接が困難であるため,高強度の高力ボルトを主体とする接合法を開発します。
床制振システムの開発
 床スラブと梁の間に高分子材料を挿入することで, 鋼構造骨組の地震応答を低減することができる新しい床システムの実用化開発を進めています。 この床システムは高分子材料の両面に鋼板を接着し,これを鋼梁と床スラブの間に挿入するもので, 骨組の地震応答低減効果を解体性の向上を同時に実現します。

床制振システムの概要             地震応答低減効果
既存建物の耐震性能検証
 年代や施工品質により既存建物が現有する耐震性能が様々に異なる実態を, 実建物から採取した構造材やこれを模した試験体の実験で検証し, 建設当時の設計・施工技術を反映した性能評価に基づいて地震被害予測や耐震補強策に役立てます。 特に,柱梁接合部の溶接ディテール,溶接部の外観検査や超音波探傷検査による施工品質, 繰返し載荷実験による変形性能との関係を明らかにしました。
マクロ試験による溶接欠陥調査

超音波探傷試験による溶接欠陥の発生状況    既存鉄骨骨組の性能検証実験    
高度成長期の超高層建物の耐震性能検証
 初期の超高層建物は制振装置などをあまり使わず主要構造骨組の塑性化を許容する設計であるから, 継続時間が長い長周期地震動を受けたときの主体構造の損傷が懸念されます。 初期超高層建物の鋼構造柱梁接合部を対象に,当時の接合部の設計・施工を再現した試験体により実験的に変形性能を検証し, 特にフランジ溶接ウェブ高力ボルト接合された現場溶接形式の接合部で変形性能が低い場合の補強策として, ウェブ高力ボルト接合部の補強が効果的であることを示しました。
初期超高層ビルを再現した実大の柱梁接合部試験体

初期超高層ビルの特性を模した地震応答解析モデル

南海トラフ地震による予測地震動を受ける初期超高層ビルの応答
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